弁護士コラム

外貌醜状障害の等級が男女同一になりました

外貌醜状障害の等級が男女同一になりました

1 労災保険法施行規則「障害等級表」の改正が施行されました

厚生労働省は、2011年2月1日、外貌(頭や顔、頸など人目につく部分)に火傷や傷跡が残った場合の醜状(しゅうじょう)障害について、労災保険の等級を定める「障害等級表」を改正し、同日施行しました。

当事務所の村井・大島と糸瀬が弁護団として取り組んだ訴訟において、京都地裁は、2010年5月27日、男性の著しい外貌醜状障害について、女性の7級よりも低い12級と定めていた障害等級表を違憲と判断し、同判決は同年6月11日に確定しました。今回の改正は、これを受けたものです。

2 新しい障害等級表の内容―男女同一・9級の新設・遡及適用

改正の主な内容は以下のとおりです。

  • (1)外貌醜状に関する男女の等級を同一のものとする
  • (2)外貌に「相当程度の醜状を残すもの」について、9級を新設する。
    ― 具体的には、原則として、顔面部の長さ5センチメートル以上の線状痕で、人目につく程度以上のもの
  • (3)改正前の12級13号又は14級10号に該当し(すなわち、男性の外貌の醜状障害について)、2010年6月10日以降に障害補償給付の支給決定を受けた者又は受ける者については、当該障害補償給付の支給事由が生じた日から新しい障害等級表を適用する。
    ― 改正された障害等級表は、施行日である2011年2月1日以降に症状固定(簡単にいうと、治療が終わり、残った後遺症について、等級認定を受けることによって、後遺障害として障害補償給付の対象となる状態のことをいいます)した後遺障害について適用されるのが原則です。

    しかしながら、2011年2月1日以前に症状固定した場合でも、以下のような場合には、改正後の障害等級表が適用されます。

    • (A)2011年2月1日以前に症状固定し、2010年6月10日以降2011年2月1日までに、以前の障害等級表に基づく障害補償給付の支給決定を受けた場合
    • (B)京都地裁平成22年5月27日判決の事件の原告男性のように、2011年2月1日以前に症状固定はしたが、原処分が取り消されるなどして、2010年6月10日以降に新たな支給決定を受ける場合

      また、2011年2月1日時点の審査請求事案については、改正後の等級表に基づいた決定がされることになります。

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厚生労働省ホームページから引用

3 自賠責保険等への影響

労災保険の「障害等級表」は、交通事故の被害者の後遺障害について保険金を支払う自賠責保険の後遺障害別等級表や国家公務員、地方公務員の災害補償における障害等級表など様々な障害等級を定める際の参考とされており、同様の内容となっていることから、今回の労災障害等級表の改正を受けて、これらの「障害等級表」も改正されることになります。

自賠責保険については、金融庁の自賠責保険審議会によれば、年度内にも労災保険に準拠して後遺障害別等級表の改正を行い、平成22年6月10日以降に発生した事故に適用するとしています。その結果は、男性の著しい外貌醜状障害に対して支払われる保険金はこれまでの224万円(12級)から1051万円(7級)と約5倍となります。朝日新聞の報道によれば、自賠責保険では顔の傷を含む後遺障害だけで年間7万件近くの支払い実績があるとのことですから、今後、各方面に大きな影響を与えることになります。

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金融庁自動車賠償保険審議会資料から引用

以上

2011年3月