京都地裁でも勝利 高齢者再雇用の有期労働者に雇用継続の期待権発生
京都地裁でも勝利! 高齢者再雇用の有期労働者に雇用継続の期待権発生
2010年11月26日、京都地方裁判所は、高齢者雇用安定法の下制定された就業規則に基づき、雇用期間を1年間、雇用期間上限を64歳として再雇用された労働者が1年目の雇用期間終了時に雇い止めされた事件について、雇用継続に対する期待権を認め、会社に対して、地位の確認と賃金の支払いを命じる判決を下しました。
事案の概要
原告は、ディスプレイ器具やマネキンのメーカーである株式会社ヤマトマネキンの子会社である株式会社エフプロダクトに勤務していたAさんです。Aさんは1967年にヤマトマネキンに入社し、マネキンのメイクアップの業務をしていましたが、子会社に転籍し、子会社の統合によってエフプロダクトで勤務するようになりました。
Aさんは、2008年6月に同社を定年退職しましたが、2006年に施行された改正高齢者雇用安定法の下、同社で制定された就業規則等に基づき、同社に再雇用されました。Aさんは、再雇用後はディスプレイ器具やマネキンの倉庫管理業務に従事してきました。
同社の就業規則では、定年退職した従業員は、健康や意欲や業績等の問題がない限り1年の期間で再雇用され、その後も、健康や意欲の問題がない限り、65歳まで(ただしAさんについては経過措置で64歳まで)契約を更新することになっていました。
ところが、同社は、Aさんを再雇用した後の2009年になってから、「未曾有の不況」を理由にAさんを雇い止めしました。不況といいながら雇い止めされたのはAさん一人であり、会社は雇用調整助成金を活用した一時帰休等も行っていませんでした。実際には、労働組合の執行委員長をしていたAさんをねらい撃ちにした不当労働行為の要素が色濃い事案でした。
大阪高裁での勝利
この件については、別途、労働仮処分を提起しており、2010年6月25日、大阪高裁は会社がAさんに対して賃金の仮払いをするよう命じる決定を出しています。この点についてはすでに御報告していますので、そちらをご参照下さい。
「まきえや」2010年秋号
高齢者再雇用の有期労働者に雇用継続の期待権発生~大阪高裁が賃金仮払命令~
京都地裁判決でも勝利
本訴に関し、京都地方裁判所は地位確認と賃金の支払いを命じ、Aさんの完全な勝訴となりました。判決は「就業規則で、再雇用に関し、一定の基準を満たす者については「再雇用する。」と明記され、期間は1年毎ではあるが同じ基準により反復更新するとされ、その後締結された本件協定でも、就業規則の内容が踏襲されている。そして、現に原告は上記再雇用の基準を満たす者として再雇用されていたのであるから、64歳に達するまで雇用が継続されるとの合理的期待があったものということができる」「そして、原告が60歳定年までの間、平成7年4月以降統合前のメディア社及び統合後の被告において期間の定めなく勤務してきたことを併せ考えると、本件再雇用契約の実質は、期間の定めのない雇用契約に類似するものであって、このような雇用契約を使用者が有効に終了させるためには、解雇事由に該当することのほかに、それが解雇権の濫用に当たらないことが必要であると解される」として本件に関して解雇権濫用法理の類推適用を認めました。
その上で、整理解雇4要件を検討し、解雇の必要性は認められるものの、解雇回避努力義務がなされておらず、選定基準にも合理性がないことから、雇い止めは解雇権の濫用にあたり無効としました。
まとめ
京都地裁の判決は、大阪高裁の決定をほぼ踏襲する内容となっており、高齢者再雇用の労働者の地位を「期間の定めのない雇用契約に類似」、すなわち、正社員に準じる地位とみとめたことは高く評価できます。今後も、判決の確定と事件の解決のため、全力を挙げます。