弁護士コラム

元横綱若乃花が代表者を務めていたちゃんこ鍋店が不当労働行為/職場復帰と給与支払いを命じました

元横綱若乃花が代表者を務めていたちゃんこ鍋店が不当労働行為
職場復帰と給与支払いを命じました!!

1.はじめに

2009年8月12日、京都府労働委員会は、2008年11月1日まで元若乃花・花田勝氏が代表取締を務めており、ちゃんこ鍋店等を営業する株式会社ドリームアーク(以下「ドリームアーク」とします)に対して、「Chanko Dining若」京都四条店に勤務していた労働組合員3名の採用と、同3名に対して2008年11月1日以降の給与の支払いを命じる命令を出しました。

2.事件の経緯

「Chanko Dining若」京都四条店は、もともと、ドリームアークの関連会社からフランチャイズを受けていた株式会社ディバイスリレーションズ(以下「ディバイス」とします)が営業していました。ディバイスでは従業員に対して、時間外労働手当、深夜勤務手当等、法律で要求される諸手当を全く支払っていない下で、多い月には300時間にも及ぶ過酷な労働を強いていました。

2008年7月以降、ディバイス運営に係る「Chanko Dining若」の従業員を中心に労働組合を結成し、残業代等の請求を行う動きがありましたが、ディバイスが団体交渉に応じず、また、2008年9月末には店舗の経営をドリームアークに譲渡するなどの動きに出たため、従業員らが時間外労働手当・深夜労働手 当の支払い等を求めて訴訟を提起しました。

一方、ドリームアークは、ディバイスから4店舗の事業譲渡を受ける際、時間外労働手当等の請求をし、訴訟を提起していた労働組合員らのみを「不採用」として、他の希望した正社員及びアルバイト従業員すべての雇用を承継しました。

3.不当労働行為の救済命令申立と今回の命令

このような事態を受け、組合員らは、2008年11月8日に、雇用継続等をもとめて京都府労働委員会に申立をしました。

今回の命令は、ディバイスからドリームアークへの雇用の包括的承継の合意は認められない、とした上、「雇い入れの拒否は、一般的には、法7条第1号本文にいう不利益な取扱にも、同条第3号の支配介入にも当たらないが、それが従前の雇用関係における不利益な取扱に他ならないとして不当労働行為の成立を肯定することができる場合に当たるなどの特段の事情がある場合には、同条1号本文にいう不利益な取扱いあるいは同条3号の支配介入に当たりうると解するのが相当である」と述べ、JR事件に関する平成15年12月22日の最高裁判例の規範を援用した上、ドリームアークが、訴訟を提起した従業員らに対して、あらかじめ採用しないことを告知していた(機転を利かせた組合員が録音をしていました)こと等を捉え、不当労働行為性を認め、採用を命じました。

「中労委青山会事件」のように雇用承継されたとまで言えないような場合でも、救済された事例として画期的な意義を持つ命令です。

2009年8月