活動紹介

事件報告:遺産分割協議書がなくても勝訴!!
~書面は存在しないが遺産分割協議の成立を認定した判決~

はじめに

 遺産分割の問題が発生し、相続人間で話をした後、遺産分割協議書(書面)を作成せずに話を終わらせてしまっている場合があります。
 ところが、遺産分割協議書(書面)がないことによって、後日、新たな争いになる場合があります。

事案のご紹介

 当職が最近経験した事案をご紹介します。
 被相続人のAさんは、平成26年頃にお亡くなりになりました。法定相続人は、Aさんの子供2人(Bさん、Cさん)でした。Aさんの遺した財産は、数百万円の預貯金と家電やお墓等でした。
 BさんとCさんは、Aさんが亡くなってから約2週間後に面談し、Aさんの遺した財産をどのように分けるか話合いました。その際、遺産分割協議書(書面)は作成しませんでした。
 その話合いに基づき、Bさんは預貯金を取得し、Cさんは家電やお墓等を取得しました。
 Bさんとしてはこれで遺産分割協議は終わったと思っていたところ、令和4年になって、突然、CさんはBさんを相手に調停を起こし、その後、訴訟へと発展しました。
 Cさんからは、遺産分割協議書(書面)を作成していないので、遺産分割協議はまだ成立していない、預貯金については後ほど分配する約束になっていた等と主張されました。
 当職はBさんから依頼を受けて、Cさんの主張に対して、証拠を整理して提出し、丁寧に反論を重ねました。
 そうしたところ、裁判官は、平成26年当時、Cさんが生活保護を受給しておりこれを継続したい意思を有していたと考えられること(預貯金を受け取ると生活保護の返還や停止の可能性がある)、平成26年当時BさんとCさんがメールでやり取りを何度かしていること、Cさんが被相続人のAさんからお金を借りていたこと等を認定し、当方の主張をほぼ全面的に認めました。
 結論としては、遺産分割協議書(書面)はないものの遺産分割協議は存在していたと裁判官は結論づけて、当職の依頼者であるBさんを勝訴としました。
 裁判官の傾向としては、書面の存在を非常に重視しますので、本件のように書面が存在しないにも関わらず、遺産分割協議の成立を認定するというのは稀なケースと思います。
 遺産分割協議の成立を窺わせる多数の証拠を時間をかけて整理して提出し、丁寧に主張を続けたことが勝訴に結びついたと考えられます。

遺産分割協議書(書面)の作成をお勧めします

 結果としては当職が依頼を受けたBさんが勝訴しましたが、このように、遺産分割協議書(書面)を作成していないと、後日、遺産分割協議が存在したのか否か、遺産分割協議の内容等をめぐって、新たな争いになる場合があります。
 そのため、遺産分割協議書(書面)を作成することを強くお勧め致します。
 また、弁護士の方でも、適宜、遺産分割協議書の作成が可能ですので、改めてご相談頂くことをお勧めさせて頂きます。

以上