1 いろいろなタイプのアスベスト被害
7月9日、京都アスベスト弁護団が主体となって工場型アスベスト被害の救済に向けた訴訟を京都地方裁判所に提起しました。
実はアスベスト被害といってもいろいろなタイプがあり、2021年に最高裁で国・建材メーカーを断罪する勝利判決を勝ち取ったのは建設現場でのアスベスト被害に関するものでした。今回はそうではなく、工場型と呼ばれるもので、石綿紡織工場など石綿の加工・石綿製品の製造等を行う工場等の屋内でのアスベスト被害についてのものです。既に国の責任を認める最高裁判決が2014年に下されており、その枠組みに基づいての提訴となります。
2 工場型アスベスト被害の枠組み
「枠組み」というのは、次の3点を充たすことで、これらの点を充たしていることが訴訟の中で確認されれば国が和解に応ずることになっています。
①1958年5月26日から1971年4月28日までの間に、局所排気装置を設置すべき石綿工場内において、石綿粉じんにばく露する作業に従事したこと
②その結果、石綿肺、肺がん、中皮腫、びまん性胸膜肥厚など石綿による一定の健康被害を被ったこと
③提訴の時期が損害賠償請求権の期間内であること
3 アスベスト被害の救済に向けた取り組み
今回原告となったのは、1969年から2003年まで株式会社日本レイヨン(現:ユニチカ株式会社)の宇治工場に勤務していた方です。同社では、勤務中に取り扱った石綿から石綿粉じんに曝露して石綿関連疾患を発症した元従業員についての労災認定例などが多くあります。
しかし、会社の規模からすればまだまだ被害が埋もれているおそれがあります。もちろんほかの会社でもアスベスト被害はたくさんあるでしょう。アスベストによる被害の実態を多くの方に知っていただき、1人でも多くの方の救済へとつなげるため、当事務所も奮闘して参ります。