2022年4月15日,厚生労働省は,「労働安全衛生規則等の一部を改正する省令の施行等について」という通達(基発0415第1号。https://www.mhlw.go.jp/content/11300000/000930497.pdf)を発出しました。
この通達は,「これまで労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)に基づく措置の対象としていなかった一人親方等について,新たに・・・措置の対象とする」ものであり,建設アスベスト訴訟最高裁判決を踏まえたものです。
建設アスベスト訴訟最高裁判決では,国の責任として,どこかの事業主に雇用されている労働者についてのみならず,いわゆる一人親方や零細事業主についても損害賠償が認められました。その理由は,危険な物質について周知する掲示義務規定に関しては労働者でない者であってもその掲示によって危険性を知ることができること,危険な物質を含有する製品への警告表示義務規定についても同様であること,にあります。
そこで厚労省は,同判決を踏まえて,「労働者と同じ場所で働く労働者以外の一人親方等に対しても,労働者と同等の保護措置を図る」べく,法律を改正し,通達を発出したのです。これにより,危険な作業を行う事業主は,同じ作業上で働く一人親方など,同事業主と雇用関係にない者(下請業者など他社が雇用する労働者,資材搬入行社,警備員など)との関係でも一定の保護措置を講ずることが義務付けられることになります(詳細は厚労省のホームページhttps://www.mhlw.go.jp/content/11300000/000930498.pdfをご覧下さい。)。
施行日は2023年4月1日です。
建設アスベスト訴訟の中で私たちは,労働者も一人親方も同じように働き同じように被害に遭っているのだから同じように救済されるべきだと訴え続け,最高裁で勝訴判決を勝ち取りました。さらに,被害救済だけでなく,今後の被害発生を防ぐために重要となる法律の改正なども実現したことになり,大変嬉しく思っています。
当事務所では建設アスベスト被害の救済・防止のため,今後も様々な取り組みを続けていきたいと思います。