１　責任が確定した建材メーカーはこれで１１社に

２０２２年２月１０日、最高裁判所は、九州建設アスベスト１陣訴訟について、建材メーカーの上告を棄却するなどしました。これにより、エーアンドエーマテリアル、ケイミュー、ニチアス、ノザワの４社に対して合計１億２５３３円の損害賠償を命じた福岡高等裁判所の判決（２０１９年１１月１１日）が確定することになったのです。

２０２１年５月１７日には、京都訴訟を含む各地の建設アスベスト訴訟についての最高裁としての統一的な判断が示され、アスベスト建材市場で一定以上のシェアを占めていた建材メーカーが被害者に対して共同して損害賠償責任を負うべきことになりましたが、今回の決定によって改めて建材メーカーの責任が明らかになりました。これまでに責任が確定していたのはエーアンドエーマテリアル、神島化学工業、日鉄ケミカル＆マテリアル、大建工業、太平洋セメント、ニチアス、日東紡績、バルカー、ノザワ、エム・エム・ケイの１０社だったところ、今回新たにケイミューが認められたことで合計１１社の法的責任が認められたことになります。

２　外装材についての建材メーカーの責任

とりわけ注目すべきなのは、今回の最高裁の決定によって、屋根材やサイディング材などの外装材に関する建材メーカーの責任が認められた点です。これまでは、こうした外装材は屋外で切断加工されることを理由に責任が認められていませんでしたが、今回の最高裁決定では、「屋外で施工される場合であっても‥粉じんばく露は避けがたい」「加工がすべて屋外でなされるとも直ちに認定できない」などの理由で責任を認めた福岡高裁判決が是認されました。外装材だから危険でないなどという建材メーカーの弁明は否定されたのです。

実は京都訴訟でも、押出成型セメント板という種類の建材について、建材メーカーの側から「屋外で加工するので責任はない」という趣旨の主張が出されていたのですが、裁判所は「屋内で加工することもよくあった」ということで責任を認めていました。今回の最高裁の判断はこれと同じ立場に立つものです。建設現場での建材加工の実態を直視した正当な判断だと思います。今後の被害救済や責任追及に大きな力になるでしょう。

３　これからも被害救済のために尽力します

当事務所は建設アスベスト訴訟弁護団の一員として長年にわたって建設アスベスト被害に取り組んでいます。建材メーカーに対する請求はもちろん、既に始まっている建設アスベスト給付金制度の申請手続きも行っています。

建設現場で働いていた方で肺がんや中皮腫などを発症された方やそのご家族、ご遺族の方、お力になりますので、いつでもご相談ください。