大阪高裁で勝訴判決!!(会社に対して安全配慮義務違反で損害賠償請求をした事案)
はじめに(労災の認定と安全配慮義務違反による損害賠償請求との関係)
労災(労働災害)とは、労働者が労務に従事したことによって被った負傷、死亡等のことを言います。労基署にて手続を行い、労災と認定されれば、療養補償給付、休業補償給付等の給付を受けることが出来ます。これは、会社に過失がなくても、一定の金額を労働者に給付する制度です。
他方で、労働災害によって、長期間の入通院を余儀なくされたとしても、その精神的損害に対する慰謝料は、補償されません。後遺障害が残ってしまっても、それに対する慰謝料も補償されません。
労災保険の給付では賄うことができない損害については、会社に過失があることを証明しつつ、民事上の損害賠償請求によって損害の回復を図る必要があります。
会社に過失があると言える場合としては、例えば、会社が、安全に労働者が働ける環境を整備する事を怠った結果として労働災害が発生した場合(安全配慮義務違反が存在する場合)等があります。
大阪高裁で勝訴!!(会社に対して安全配慮義務違反で損害賠償請求をした事案)
某エネルギー会社に勤務していたとある男性が、会社から長時間労働を強いられ続けた結果、心臓疾患(狭心症)に罹患して手術等を強いられました。
これについて、労災の認定手続きを行ったところ、後遺障害等級11級9号(胸腹部臓器の機能に障害を残し、労務の遂行に相当な程度の支障があるもの)が認定されました。
当該認定に基づきつつ、会社には労働時間の管理を怠った安全配慮義務違反が存在する等と主張して会社に対して慰謝料等の損害賠償請求を行いました。
ところが、会社は、安全配慮義務違反は存在しない、男性が心臓疾患を発症したのはもともとの生活習慣が原因だ等と反論して、一円たりとも支払いをしないという強硬な姿勢をみせました。
そのため、大阪地方裁判所に訴訟を提起していたところ、大阪地裁は、会社の安全配慮義務違反は認めつつも、男性の生活習慣(喫煙の習慣があったこと等)が発症の大きな原因として、結論としては、労災からの既払金(約400万円)等を除いて約450万円程度の支払いしか判決で認めませんでした。
これに対して、直ちに大阪高等裁判所に控訴手続きを行いました(会社側も控訴)。追加の証拠が必要と判断したため、当職は、男性の心臓を診て貰っている担当医師の所へ面談に赴き、何度か意見交換を行って、担当医師の意見書を作成することが出来ました。
これを提出して大阪高裁の審理に望んでいたところ、2019年9月に判決言い渡しとなり、合計1300万円(遅延損害金等を含む)の支払いが認められることとなりました。
まとめ(相談のお勧め)
労災が認定されていても、慰謝料等の支払いが会社からなされていない労働者の方は他にも多数いらっしゃると思います。
会社に対して慰謝料等の請求を行い、損害賠償を勝ち取るためには、専門的知識が必要となります。お困りの方は是非、一度、弁護士にご相談下さい。