活動紹介

安倍「働き方改革」に騙されないで

安倍「働き方改革」に騙されないで

企業がもうけるための「働き方改革」

安倍政権の掲げた「働き方改革実行計画」には長時間労働の是正や賃金引上げ、正規と非正規との格差の是正など美辞麗句が並び、当初はこれに期待する声も上がりました。

しかし実際には過労死ラインの名ばかり残業規制や労働時間規制の緩和、雇用流動化の促進、非雇用型労働の拡大など、「世界で一番企業が活躍しやすい国」(2013年2月28日の演説)を目指すアベノミクスの補完的位置づけでしかないことが明らかとなっています。労働者のための真の働き方改革ではなく、正に「使用者のための働き方改革」といわなければなりません。

一括法案という手法の問題性

そして2017年9月8日、政府がまとめたのが「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案要綱」で、関連する法律は8本もあります。労働基準法、労働安全衛生法、じん肺法、労働時間等の設定の改善に関する特別措置法、短期間労働者の雇用管理の改善等に関する法律、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律、労働契約法、雇用対策法です。じん肺法が含まれていること、ご存じでしたか?

これは、いくつかの法案をまとめて審議の対象とするもので、一括法案と呼ばれます。安倍政権はこれまでも、内容や性質の異なる複数の法案を一括法案として提出するという手法を多用しています(戦争法制が典型です)。これは十分な審議をさせず、批判の声を封ずるための方策であって、国会や議会制民主主義を蔑ろにするものです。このような手法を、まず厳しく批判しなければなりません。

「働き方改革」の実態

①無意味な「上限規制」

実際の法案の中身を見ると、長時間労働の是正を喧伝しながら、実際にはそれを促進する内容になっています。月平均80時間という過労死ラインそのものの残業(月単位では最大100時間)をさせることが合法とされていますし、建設分野や自動車等の運転など長時間労働が大きな問題となっている業種については規制の例外におかれています。

②「残業代ゼロ」の労働者の大幅拡大

しかも、逆に裁量労働制の拡大や高度プロフェッショナル制度を導入することにより、そもそも労働時間の上限規制がかからない雇用者を大量に作り出すことを可能としています。高度プロフェッショナル制度の要件は「高度の専門的知識等」「従事した時間と従事して得た成果との関連性が通常高くない」とされていますが、いずれもあいまいなものであり、対象業務が際限なく広がる危険性がありますし、年収要件も、現在は1200万円以上といわれていますが、日本経団連は、2005年6月21日に発表した「ホワイトカラーエグゼンプションに関する提言」の中で、対象労働者を「年収400万円以上」の労働者にすることを提言していますから、今後対象が大きく広がってしまう危険があります。

また、裁量労働制についても、対象が不明確で事実上要件としての限定機能はあってないようなものです。現行の企画業務型裁量労働制についてすら、実態としては労働者に裁量がないにも関わらず同制度を適用し、残業代支払を免れる手法として濫用されている実態がありますから、今後ますます拡大しかねません。

③非正規雇用の格差を追認

また、安倍首相が「同一労働同一賃金の実現」「『非正規』という言葉をなくす決意」と何度も発言していたのに、蓋を開けてみれば現状と変わらない均等・均衡待遇規定となっていて、むしろ現状の格差を追認するだけのものとなっています。使用者側に格差の合理性についての立証責任を課すような制度にしなければ、格差是正は画餅に帰します。

④労働法の抜け穴拡大

さらに問題なのは、労働法による保護を受けない「非雇用型」労働者を増やそうという意図が顕著に表れていることです。その典型が雇用対策法で、現行法では「雇用に関し・・・必要な施策を総合的に講ずることにより・・・労働者の職業の安定と経済的社会的地位の向上とを図る」とされていますが、法律の名称を「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」と改めた上、「雇用に関し」を「労働に関し」と改め、さらに「労働生産性の向上」を新たに盛り込み、国の施策として「多様な就業の普及」を図るなどとしています。この法律は、労働政策について国の基本的な方針を示す重要な法律です。その法律の中で、「雇用」という言葉をわざわざ「労働」と変える点には、非雇用型の労働者(請負や個人事業など、使う側が使用者責任を負わないタイプの就労形態)を増やして企業のメリットを高めようという意図が透けて見えます。また、「労働生産性の向上」というワードにも要注意です。これは規制緩和を推進する側が、その必要性を主張するときにマジックワードのように繰り返す単語です。しかし内容は不明確ですし、それがどうして必要なのか具体的根拠も示されていません。単に規制緩和の口実にされているといわなければなりません。

反対の流れをつくろう

「使用者のための働き方改革」を断念させ、労働者のための法制度を実現していくためにも、問題点を広く知ってもらい、運動を広げていきましょう。