建設アスベスト訴訟、審理は大阪高裁へ
~早期救済に背を向ける国とメーカーの不当控訴~
1 早期全面解決の願いを無視した国とメーカーの控訴
本年1月29日、京都地方裁判所第4民事部(比嘉一美裁判長)は、関西建設アスベスト京都訴訟(原告数27名、被害者数26名)において、国に対して総額1億418万円、アスベスト建材メーカー9社に対して総額1億1245万円、合計2億1600万円余りの損害賠償を原告らに支払うよう命じる画期的判決を下しましたが、それを不服として、賠償を命ぜられた国とアスベスト建材メーカー9社が、本日までに、いずれも大阪高等裁判所に控訴しました。とりわけ建材メーカーは、判決当日の控訴が4社、週明け2月1日の控訴が2社など、2月3日までに全9社が早々と控訴しています。
これは、石綿関連疾患に苦しむ原告らの「いのちあるうちの解決を」の切実な願いを踏みにじり、早期全面解決を求める声を無視する不当なものといわなければなりません。(京都地裁判決について詳しくは、「建設アスベスト訴訟、初めて企業の責任を認める!~京都地裁で原告の全面勝訴判決~」をご覧下さい)
2 潮目を変えた京都判決
京都地裁判決は、一連の建設アスベスト訴訟で初めてアスベスト建材メーカーの責任を断罪しました。内容的にも、主要企業のほとんどに責任があるという内容だったため、その影響は大きく、全国で闘う原告の皆さんも自分のことのように喜んでくれました。各地の原告団や支援の方々は大変な盛り上がりだったようで2/2に実施されたニチアス包囲行動にも各地から1000人の原告・支援者が参加してくれました。その姿を目にして、私たちも本当に嬉しく、大いに励まされています。
建材メーカーの法的責任を認める判決が出たことで、これまではアスベスト被害の救済基金創設を求める被害者側との交渉を拒否していた企業がこれに応じるなど、企業の対応にも変化が表れ始めています。基金創設への協力に前向きな発言も増えてきました。
さらに、本判決を契機に、建設アスベスト被害に対するマスコミの注目度も一気に上がりました。判決報道や社説は新聞・テレビ、主要紙・地方紙を問わず流れ、判決後の厚労省等への要請や企業交渉の様子も大きく報道されています。「国と企業は全面救済を」(1/30京都新聞社説)、「被害者の全面救済につながる制度づくりにこそ力を尽くすべき」(1/31神戸新聞社説)、「(国とメーカーは)ともに救済策を考えるべき」(2/1朝日新聞社説)、「メーカーも応分の責任を」(2/2読売新聞社説)と、社説でも早期救済・全面解決を求める声が一様に上がりました。
このように、本判決を契機に大きな変化が表れ始めており、建設アスベスト被害の全面救済に向け、「潮目が変わった」といえるでしょう。
3 国とアスベスト建材メーカーは直ちに謝罪と賠償を
それだけに今回の国・企業による控訴は、とうてい容認できるものではありません。
既に東京、福岡、大阪、京都と4連続で敗訴判決を受けている国による控訴は、原告や国民の声を無視するのみならず、確立した司法判断をもなりふり構わず免れようとするものであって、いたずらに解決を先延ばしするだけのものです。また、アスベストの危険性を知りながらそれを隠して製造販売を続け、巨額の利益を上げてきたアスベスト建材メーカーの争い続ける態度には、これまでの訴訟において、「使用した建材が特定されていない」と言い逃れを続けてきた不誠実な姿勢が端的に表れています。被害者の声に耳を貸そうとせず、加害責任と向き合おうとしないこうした対応も、被害者をないがしろにするものでしかありません。
不当な控訴によって解決が遅れる間に、果たして何人の方が亡くなられるのでしょう。国と建材メーカーは、直ちに控訴を取り下げ、原告らに謝罪して速やかに賠償責任を果たすべきです。
4 アスベスト被害の完全救済と根絶を目指して
被害者の声を無視して早期救済を拒否した国と建材メーカーの不当な控訴によって、舞台は大阪高等裁判所へと移ることになります。
私たちも、一人親方をはじめ原告全員に対する完全な賠償と謝罪を勝ち取るために、本日控訴しました。一日も早いアスベスト被害の完全救済と根絶のため、全国のアスベスト被害者、支援者、および市民と連帯して、より一層奮闘する決意です。今後も変わらない皆様のご支持・ご支援を、心よりお願い申し上げます。
当事務所からの参加は、弁護団長の村山晃、対企業の責任者である谷文彰、大河原壽貴、秋山健司の4名です。