残業代計算ソフト(エクセルシート)「給与第一」Ver0.53の使用マニュアル
0.対応するExcelのバージョン
給与第一Ver.0.53は、Excel2007以降のみに対応しています。それ以前のバージョンの方は給与第一Ver.0.41をお使い下さい。
1.「計算規則」の記入
(1)計算期間設定
第1で計算期間の設定をします。ソフトで表示(計算)する期間(3年間)の最初の月を設定します。半角で任意の年月を記入してください。これを記入すると、後述の「時間・賃金計算書」でその日から3年間の表示(計算)をします。
(2)給与締め日の設定
各事業所では給与計算の区切りとなる締め日(支給日ではありません)があります。たとえば「毎月25日締めで月末払い」などという場合の毎月25日のことです。第4ではこの給与支給の締め日を設定します。
給与締め日については毎月1~27日、及び末日締めに対応します。末日締めの場合は「31」と記入して下さい。28日締め、29日締め、30日締めは対応していません。
(3)月の表示の設定
第3では月の表示の設定を行います。本ソフトの初期状態では、ある月の月末を含む給与計算上のひと月をその「ある月」分と表示します。例えば、給与締め日が毎月25日の場合の2012年「1月」を考えると、給与計算上の次のひと月は1月26日から始まりますが、本ソフトではこの2012年1月26日から2月25日までの給与計算上のひと月を「1月」分と表示します。このようにしたのは、ひと月の日数の違いがあらわれるのが月末だからです。
ただ、このような場合に1月26日から始まる給与計算上のひと月を「1月」分ではなく「2月」分と表示する事業所も多いと思われます。そのような場合は「0」を記入すると、月の表示が一つずつずれ、1月26日から始まる給与計算上のひと月が「2月」と表示されます。なお、「2」と記入すると表示が狂いますのでご注意下さい。
(4)一週間の起点となる曜日設定
第4で一週間の起点となる曜日の設定を行います。事業所で特別な決まりがない場合(ほとんどの場合、特別な決まりはないと思います)は行政通達に基づき日曜日を選択することになります。初期設定は日曜日になっています。
(5)月60時間超の150%の割増賃金の適用の有無
適用する場合は「1」、適用しない場合は「0」を記入して下さい。初期状態では適用しない状態になっています。適用のある事業所は、労使で合意がある場合を除けば、「当面の間」、事業主が以下のいずれにも該当しない場合のみです(法附則138条)。労働者の数は事業所ごとではなく企業全体で見ます。
- 資本金3億円以下(小売業又はサービス業を主たる事業とする事業主については五千万円、卸売業を主たる事業とする事業主については一億円)の事業主
- 常時使用する労働者の数が三百人以下(小売業を主たる事業とする事業主については五十人、卸売業又はサービス業 を主たる事業とする事業主については百人)の事業
(6)事業所所定労働時間
事業所の所定労働時間が8時間以下の時は記入して下さい。これを記入することで法内残業の計算がされます。また、例えば四週六休制など、変則的な労働時間制の場合は、この欄に原則形を記入した上で、個別の日の労働時間については「時間・賃金計算書」のM列「事業所日所定労働時間★」欄に各日の具体的な所定労働時間を記入して下さい。本ソフトでは使用者が記入可能な欄は「★」印が付いています。
また、本ソフトでは法定外休日(例えば週休二日制で、法定休日が日曜日で、土曜日も休日である場合の土曜日)は一日の所定労働時間が0時間の日として扱っています。
(7)時間外時間に関する設定
残業代等の割増率を設定します。初期設定では法内残業は1.0、法定外残業(一日8時間超、週40時間超)は1.25、深夜・早朝勤務は0.25、法定休日勤務は1.35に設定してあります。時給制の場合で残業についても基礎部分(例えば時給800円で残業の時は2割5分増で1000円となる場合の800円部分)が全て支払われている場合は、法定労働時間の割増率を0.25、法定休日の割増率を0.35、事業所所定労働時間(法内残業)の割増率を0とすることで既払金の計算が不要になります。
一方、事業所で上記初期設定を上回る割増率を設定している場合には、初期設定の利率を変更することは予定していません。その部分は付加金の対象とならないところ、初期設定値を変えてしまうと、このソフトで計算する付加金額に反映してしまうためです。この場合は後述の「時間・賃金計算書」のV列「付加金対象外調整欄★」で計算することになります。
2.「基礎時給計算書」の記入
(1)始めに
本ソフトでは労働基準法37条1項の「通常の労働時間または労働日の賃金の計算額」を「基礎時給」と呼んでいます(様々な書物で「基礎単価」「基礎賃金」などとされるものと同様のものです)。時給額で結果が示されるため、法律に親しまない一般人でも理解しやすい言葉を用いました。基礎時給の計算方法は下記に記載した労働基準法施行規則19条に示されています。
本ソフトにおける基礎時給の計算について、月給制の方は下記(2)を、日給制の方は下記(3)を、時給制の方は下記(4)を参照して下さい。また、請負制賃金については下記(5)を参照して下さい。
また、本ソフトで計算される基礎時給は小数点第一位を四捨五入したものです。
- 一 時間によつて定められた賃金については、その金額
- 二 日によつて定められた賃金については、その金額を一日の所定労働時間数(日によつて所定労働時間数が異る場合には、一週間における一日平均所定労働時間数)で除した金額
- 三 週によつて定められた賃金については、その金額を週における所定労働時間数(週によつて所定労働時間数が異る場合には、四週間における一週平均所定労働時間数)で除した金額
- 四 月によつて定められた賃金については、その金額を月における所定労働時間数(月によつて所定労働時間数が異る場合には、一年間における一月平均所定労働時間数)で除した金額
- 五 月、週以外の一定の期間によつて定められた賃金については、前各号に準じて算定した金額
- 六 出来高払制その他の請負制によつて定められた賃金については、その賃金算定期間(賃金締切日がある場合には、賃金締切期間、以下同じ)において出来高払制その他の請負制によつて計算された賃金の総額を当該賃金算定期間における、総労働時間数で除した金額
- 七 労働者の受ける賃金が前各号の二以上の賃金よりなる場合には、その部分について各号によつてそれぞれ算定した金額の合計額
○2 休日手当その他前項各号に含まれない賃金は、前項の計算においては、これを月によつて定められた賃金とみなす。
(2)月給制の場合の基礎時給計算
ア.基礎時給算出の分母となる月所平均定労働時間の記入
(ア)基礎時給の計算方法総論
月給の場合の基礎時給計算方法について、労規則19条は「月によつて定められた賃金については、その金額を月における所定労働時間数(月によつて所定労働時間数が異る場合には、一年間における一月平均所定労働時間数)で除した金額」としており、この「一年間における一月平均所定労働時間数」を自力で算出する必要があります。計算式は、
1年間の事業所所定労働日数×一日あたりの事業所所定労働時間÷12(ヶ月)
となります。一日あたりの事業所所定労働時間の上限は原則8時間となります。上記計算式の計算結果は各事業所で区々なので、本ソフトではこの値を自動的に算出しません。上記計算式を参考にして使用者自身が計算して下さい。
得られた計算結果をC列「月平均所定労働時間」の各月に記載していくことになります。
(イ)職場の月平均所定労働時間が算定できない場合
事業所の年所定労働日数が全く不明で、実態としてもほとんど休みなく働いており、事業所の年所定労働日数を特定できない場合があります。本ソフトでは、初期設定では月平均所定労働時間を月173.80時間(平年。計算式は週40時間÷一週間7日×365日÷12ヶ月の計算結果を小数点第三位で切り捨て)または174.28時間(閏年。計算式は週40時間÷一週間7日×366日÷12ヶ月の結果を小数点第三位で切り捨て)としており、それがあらかじめ記入されています。切り捨てするのは、理屈上は切り上げると労基法の上限に抵触することになるからです。事業所の月平均所定労働時間が判明するまで、そのままお使い下さい。
(ウ)月平均所定労働時間が173.8時間(174.28時間)より短い場合
事業所でこれよりも低い所定労働時間が定められている場合は、C列「月平均所定労働時間」の列に月平均所定労働時間を記入して下さい。1年間は同じ数字が記入されるはずです。
(エ)月平均所定労働時間が173.8時間(174.28時間)を越える場合
月平均所定労働時間が173.8時間(閏年は174.28時間)を超えることは、ほとんどありません。計算結果がこれら値を超えた場合は初期設定値のままにして下さい。
なお、本ソフトは変形労働時間制には対応しませんが、賃金不払いをするような職場では口では「変形労働時間制」と言っていても、法律上は無効なことが多く、(ア)の通り請求すれば足りる場合も多いと思います。
イ.基礎時給算出の分子となる給与額の記入
(ア)原則
次に基礎時給算出の分子となる給与額を算出します。D~G列の各月に基本給、諸手当等を記入して下さい。列が足りない場合は一つの列にいくつかの手当の額を合算したものを記入して構いません。ただし、請負制賃金については、「請負制賃金の残業代計算書」で別途計算するので、記入しないで下さい。
(イ)記入しない手当(除外賃金)
ただし、家族手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当、住宅手当、臨時に支払われた賃金、一箇月を超える期間ごとに支払われる賃金(労基法施行規則21条)については記入しないで下さい(※)。
※ | さらに詳細には例えば「家族手当」と称していても家族の有無や数に関係なく支給されている場合や「住宅手当」といいつつローンの額や家賃額に関わりなく定額を支給している場合は手当の実態がないことになり、除外賃金になりません。この場合は原則通り、記入して下さい。 |
使用者が残業代の先払いとして固定残業代を支払っている場合があります。「時間外勤務手当」が毎月固定額の場合、定額の「営業手当」が時間外手当である旨が就業規則に明示されている場合等です。これも記入しません。ここで記入しなかった固定残業代は逆に5で説明する「既払金計算書」に記入して残業代等の請求から控除されることになるので注意が必要です。例えば、①他の種類の賃金と明確に分離することができない場合、②固定残業代を超過した分について精算する決まりがない場合、③固定残業代の引当となる残業時間が多すぎる(例えば45時間を超える)場合、④固定残業代が残業時間ではなく、他の要素(例えば業務成果)に連動して増減している場合、は無効とされる裁判例が多数ありますので、使用者の言い分を鵜呑みにせず原則通り記入すべきです。いずれにせよ、この欄に固定残業代を記入しないことが妥当なのか専門の弁護士とも相談しながらよく検討する必要があります。
ウ.完成
上記各作業をすると、各月の基礎時給が算出され、その基礎時給が「時間・賃金計算書」のT列「基礎時給★」に反映されます。
(3)日給制の場合の基礎時給計算
H列に一日の所定労働時間、I列に日給額を記入して下さい。初期設定では一日の所定労働時間が8時間になっています。また、一日の所定労働時間が日によって違うときは上記労基法施行規則19条2号を参照して下さい。基本的に日給制ではあるものの「精勤手当」等一部月ごとに支払われる賃金があるときは、その賃金は月給として扱い、(2)の例に従って処理して下さい。
(4)時給制の場合の基礎時給計算
J列「基礎時給」の欄に月々の時給額を記入して下さい。時給額が月の途中で変わっている場合は「時間外・深夜早朝手当計算書」のT列「基礎時給★」に直接時給額を記入して下さい。時給制ではあるが「精勤手当」等給与の一部に月給制の部分があるときは、その部分の賃金は月給として扱い、(2)の例に従って処理して下さい。
(4)時給制の場合の基礎時給計算
J列「基礎時給」の欄に月々の時給額を記入して下さい。時給額が月の途中で変わっている場合は「時間外・深夜早朝手当計算書」のT列「基礎時給★」に直接時給額を記入して下さい。時給制ではあるが「精勤手当」等給与の一部に月給制の部分があるときは、その部分の賃金は月給として扱い、(2)の例に従って処理して下さい。
(5)請負制賃金の場合の基礎時給計算
請負制賃金の場合の基礎時給については後述4の「請負制賃金の残業代計算書」で別途計算します。
3.「時間・賃金計算書」の記入
(1)事業所所定労働時間の修正、基礎時給の修正
事業所所定労働時間の原則的な指定は「計算規則」で行いますが、週によって様々な例外系がある場合はM列「事業所所定労働時間★」を直接書き換えることができます。変形労働時間制には対応していませんので、8:00を超えることはありません。
1で計算した基礎時給は時間・賃金計算書のT列「基礎時給★」に既に反映されています。締め日と関係なく昇級があった場合など、個別の日について修正がある場合は、直接、T列の各日の欄に記載して下さい。
(2)本ソフトが計算の対象とする労働時間等
ア.法内残業時間
事業所の所定労働時間が8時間未満の場合は「計算規則」の第3でその旨を記載すれば、法定8時間労働制と事業所の所定労働時間の差の法内残業の時間をN列「法内残業時間」で計算します。
1日8時間以内の法内残業時間が同時に週40時間超の法外残業に該当する場合は法外残業時間としてO列、P列で計算され、法内残業としては計算されません。
法内残業を法外等労働と区別する理由は①法内残業は割増がない(1.00しか支給されない)事業所が多いこと、②法内残業代には付加金がつかないこと、です。
イ.法外残業(一日8時間超、週40時間超)
本ソフトではまず一日8時間超の労働時間をO列で各日ごとに算出します。次に、週40時間超かつ一日8時間以内の労働時間をP列で各日ごとに算出します。言い換えれば、週40時間超の労働時間でもそれが同時に一日8時間超の労働時間にも該当する場合は、すべて一日8時間超の労働時間として計算され、二重カウントはされません。これは労基法、同法施行規則の解釈によります。
なお、このように考える以上、理論上、算出される週40時間超の労働時間は、例えば一週間の起算点となる曜日が日曜日の場合(原則型)であれば、金曜日(第6曜日)か土曜日(第7曜日)のみしか発生しません。
ウ.月60時間超労働時間
月60時間超の割増の対象となる労働時間について、通常、給与計算上のひと月(定めがないときは暦上の一月)によるものと思われます。本ソフトは、給与計算上の一月における法外残業の時間うち60時間を超える分をQ列で各日ごとに計算します。
一方、「計算規則」の第3で月60時間超の計算適用について「1」と記入しない場合は計算されません。
また、法定休日における労働時間は法37条1項の「延長」された労働時間に含まれない(または含まれるとしても法外残業と法定休日労働の重複について割増率の定めがないため)ため、計算されません。
エ.法定休日勤務時間
D列の法定休日指定欄に任意の文字(「法」などとすればよいと思われます)を記入すると法定休日労働時間の計算を行います。
労基法上、「法定休日」とはそれとして指定されたある日の0時から24時のことを指します。本ソフトでは、ある日について法定休日として指定した場合、①当該指定された法定休日の0時から24時、②その前日の24時以降の労働時間、③前日が法定休日で始業時刻を前日に設定した場合の前日24:00までの労働時間、について法定休日労働時間として算出します。①については24時を超えた労働についてはもはや法定休日ではなく、一日8時間超、週40時間超の原則に戻った計算が必要なため、本ソフトではその計算を行います。②については、一日8時間超、週40時間超の労働時間ではなくなり、全てが法定休日の労働となります。
オ.深夜・早朝勤務時間
22時から29時(始業時刻が5時以前のときは前日22時から5時)の労働時間を算出します。そのまま働き続けて46:00(翌日の午後10時)以降に達した場合については、本ソフトでは計算できません。
カ.休憩時間の計算
本ソフトは、始業時刻と終業時刻の間の時間を労働時間として算出しますが、休憩時間(時刻ではなく幅のある時間です)は労働時間から排除します。休憩時間は(1)深夜・早朝勤務時間帯以外の休憩時間、(2)深夜・早朝勤務時間帯での休憩、(3)(2)のうち24時以降のものを区別して記入します。
ただ、法定休日を起点とする勤務において24時を超えて勤務を継続する場合で、かつ、24時を超えた時点で労働時間が法定外残業(一日8時間超または週40時間超)に達していない場合について、24時以降に休憩を取ると、24時以降の休憩はすべて労働時間が法定外残業(一日8時間超または週40時間超)に達する前に取ったことになります。そうでない場合は調整欄で対応するほかないと思います。これをソフト的に区別しようとすると計算が非常に面倒で、操作も複雑になり、そうであるのに実務上はごく例外的な事例と思われるため、場合分けをしませんでした。
キ.F欄「始業時刻前日指定」について
この欄は通常は使用しません。使用の必要があるのは、例えば、ある年の4月1日に0:00から12:00まで勤務し、帰宅した後、早出残業のために同日の23:50から勤務する場合のように、同一の日に二度始業時刻がくる場合です。Ver0.41まではこの場合の計算は困難でしたが、Ver0.5からは法内残業、法外残業、法定休日労働、深夜早朝勤務のそれぞれについて計算が可能となりました。
このような場合、4月1日について普通に始業時刻「0:00」、終業時刻「12:00」を記入して、4月2日のF欄に「前」と記入した上で、始業時刻を「23:50」とすると、4月2日の始業時刻23:50は前日(4月1日)の23:50として計算されます。
(3)具体的な記入
ア.計算と時間記入のルール
時間、時刻については24時間法を採りつつ、終業時刻が24時を越えるときは25時、26時とそのまま累積していくようにしています。分については1分単位で計算します。時間、時刻は「5:25」、「24:37」、「29:46」等と半角で記入して下さい。
すべての労働時間は始業する時刻が属する暦日の労働時間とされます。例えば、4月1日の「23:30」から4月2日の「29:00(5:00)」まで働いた場合はすべてが4月1日の労働時間として認識されます。
イ.具体的な記入作業
まず、各日のG列「始業時刻」に出勤した時刻を記入します。F列「始業時刻前日指定」欄に「前」と記入すると、始業時刻は前日のものとされます。
次にH列「終業時刻」に退勤した時刻を記入します。
さらにI~K列「休憩時間」に実際に取った休憩時間(「時刻」ではなく幅を持った「時間」です)を記入します。休憩時間はI列「日勤分(5:00~22:00)」、J列「深夜・早朝分(前22:00~5:00、22:00~29:00)」、K列「深夜・早朝分のうち24時以降」を記入します。J列とK列は全部ないし一部が重複した時間が記入されることとなります。例えば、25:00~26:00が休憩時間の場合、J列・K列とも「1:00」と記入します。
(4)残業代の計算
上記の記入を行うと、
①「基礎時給」で指定され、「時間・賃金計算書」で修正された基礎時給
②「計算規則」で指定された法内残業の割増率、法外残業等の割増率
③「時間・賃金計算書」で計算された計算の対象となる労働時間
が特定され、労基法所定の方法による残業代等の計算がされます。計算結果は小数点第一位を四捨五入した整数となります。
しかし、それだけで多様な事例に対応しきれるとは思われません。その場合、AA列「調整欄」(AA欄を使用するのは対象となる賃金が付加金の対象となる性質のものである場合です)に計算しきれない賃金額や過払いとなる賃金額(マイナスの数値の記入も可能です)を記入して下さい。「時間・賃金計算書」の各欄については、計算式は見えませんが、エクセルの計算式を作る上で、セルとして指定はできますので、ご活用下さい。
また、法内残業代(付加金の対象とならない性質のもの)については、V列「調整欄」を同様にご使用下さい(マイナスの数値の記入も可能です)。
4.「請負制賃金の残業代計算書」の記入
請負制賃金(「出来高払制その他の請負制によつて定められた賃金」)の残業代等の計算については、労働基準法施行規則19条6号で「その賃金算定期間(賃金締切日がある場合には、賃金締切期間、以下同じ)において」、請負制賃金総額を賃金算定期間の総労働時間で除した金額を基礎時給とします。
また、請負制賃金については「時間外、休日又は深夜の労働に対する時間当たりの賃金、すなわち1.0に該当する部分は、既に基礎となった賃金総額の中に含められているのであるから、加給すべき賃金額は計算額の2割5分以上をもって足りる」(労働省労働基準局編『平成22年版 労働基準法 上』518頁)とされ、125%支払われるべき時間外勤務手当のうち、100%分は、手当の支払いにより支払い済みとされます。従って割増率は25%(法定休日労働については35%)とされます。
このように請負制賃金の残業代は計算方法が特殊ですので計算書を独立させてあります。また、このように特殊(労働者に“不利”)な計算方法が採られるため、事業所において「請負制賃金」と扱われている賃金が本当に請負制賃金の実質を有するものであるか否かについて慎重に検討する必要があります。
また、請負制賃金の残業代計算書についてもN列「調整欄」がありますので、必要に応じてご活用下さい。
5.「既払金計算書」の記入
ここに記入するのは既に支払われた時間外勤務手当、深夜早朝勤務手当ないしそれに該当する賃金です。既に述べたことですが、定額の手当について時間外勤務手当であることが就業規則等で明示されている場合などについても、その額をここに記入することになります。ただそのように明示されている場合であっても、上記2(2)イ(イ)で記したように時間外勤務手当としての実態が無い場合などは記入する必要はなく、逆に「基礎時給計算書」に計算して基礎時給の基礎とされますので、注意して下さい。具体的には、C~G列に既払金の金額を記入すると合計額が自動計算されます。
6.「集計表」の記入
(1)はじめに
上記5項までの作業を終えると、C~F列は既に記載された状態になっています。
(2)G列「遅延損害金起算日(給与支給年月日)」の記入
ここには毎月の給与支給日を記載します。通常、支給日が日曜日等の場合は、その前に支払われることになっている場合が多いと思いますが、それを調べるのが面倒な場合は本来の支給日を一律に記入して結構です。記入は、例えば2012年1月15日の場合は「2012/1/15」と、西暦で数字は半角にして記入して下さい。
(3)H列「在職中の遅延利息計算基準日」の記入
ここには、既に退職されている方は退職後も含めて最後の給与支給日を記入するのが無難です。まだ在職されている方は提訴日等、区切りとなる日を適当に選んで記入して下さい。
遅延損害金は各月の給与支給日から遅延損害金計算基準日まで年利5%または6%で計算します。うるう年が含まれる期間についても正確に計算します。
具体的な記入例は(2)と同様です。
労働者が退職している場合、使用者は少なくとも最後の給与支給日以降(退職日前に支給日がある賃金については退職日以降)については未払賃金全額について年利14.6%の遅延損害金を負担する義務があります。
事業主は、その事業を退職した労働者に係る賃金(退職手当を除く。以下この条において同じ。)の全部又は一部をその退職の日(退職の日後に支払期日が到来する賃金にあつては、当該支払期日。以下この条において同じ。)までに支払わなかつた場合には、当該労働者に対し、当該退職の日の翌日からその支払をする日までの期間について、その日数に応じ、当該退職の日の経過後まだ支払われていない賃金の額に年十四・六パーセントを超えない範囲内で政令で定める率を乗じて得た金額を遅延利息として支払わなければならない。
(4)遅延損害金の計算
ア 在職中の遅延利息の利率の設定
遅延損害金(延滞利息)については、右上のボックスで年利5%と年利6%のどちらかを選択できるようにしました。勤務先が会社または商法上の商人である場合は年利6%、それ以外の場合は年利5%を選択して下さい。
Ver0.5から、遅延利息について、うるう年の計算も自動で行います。
イ 毎月の給与支給日の設定
次に、右上の「毎月給与支給日(末日払いは「31」)」の欄に、毎月の給与支給日を記入して下さい。毎月15日なら「15」、毎月25日なら「25」となります。毎月末日払いのときは「31」と記入して下さい。そうすると、G列「遅延損害金起算日<給与支給年月日>★」の列に給与支給日の原則型が記入されます。また、表示されている給与支給月との関係で、支払いが翌月となる場合(例えば毎月25日締めで翌月5日払いなど)のときは「翌月払い」のチェックボックスにチェックを入れて下さい。各月の支給日が一ヶ月後ろにずれます。
給与支給については、G列「遅延損害金起算日<給与支給年月日>★」の列に直接支給日を記入することも出来ます。
ウ 在職中の遅延利息の基準日の設定と算出
ソフト使用時に在職中の場合は請求日の年月日を記入して下さい。
ソフト使用時にすでに退職している場合は、右上の「在職中の遅延利息の基準日原則」の欄に退職日を記入して下さい。また、退職後に支払いがあった月の給与については、H列「在職中の遅延利息計算基準日★」の各月の欄に給与支給日を記入して下さい。
エ 賃金の支払いの確保等に関する法律6条所定の年利14.6%の遅延利息に関する基準日の設定と算出
労働者の退職後に未払賃金があるときは、使用者は、労働者の退職日の翌日以降、年利14.6%の利率による遅延利息を支払わなければなりません(退職後に給与支給日がある分はその日の翌日以降)。
本ソフト使用時に在職時の場合は、J列「↓基準日★」の下の欄の日付の記載を削除して下さい。これにより14.6%の遅延利息は計算されなくなります。
本ソフト使用時にすでに退職している場合は、J列「↓基準日★」の下に請求日の年月日を記入して下さい。例えば「2014/6/1」などとなります。これにより、退職後の年利14.6%の遅延損害金の計算がされます。うるう年の計算も自動で行います。
(5)付加金について
訴訟を提起する場合に賃金不払いの制裁金として請求できる付加金(法114条)については、時効がなく、2年間の出訴期間があります。請求できる範囲は提訴日から2年以内に支払日がある未払賃金のみです。
また、対象となる未払賃金は法定外残業代、深夜・早朝勤務手当、法定休日勤務手当であり、法内残業代は対象となりません。提訴した時期により対象となる範囲が異なるため自動計算が不可能ですから、F列「未払中付加金対象額」のうち、提訴から2年以内に支払日があるものを自分で足し算して計算して下さい。
本ソフトでは、毎月の給与支給で残業代が一部支払われている場合、法内残業代→法外残業代等の順番に充当します。
7.「付・時間認定支援表」の活用
本ソフトは、当事者で労働時間に争いがある場合に、労使の労働時間主張の違いを明確化し、裁判所等の労働時間の認定を容易にするため、この表を作成しています。
上記6までの記入が終了した段階で、「労働者側主張」の欄は全て時刻、時間が記入されているはずです。
この表を使用する場合は、「使用者側主張★」欄に、使用者側の主張を記入します。そうすると各欄に、使用者側の主張が労働者の主張との関係で労働時間が縮小するときは赤色が、労働者の主張より労働時間が拡大するときは青色がつきます。労働者の主張とイコールとなる場合は色はつきません。
裁判所等の労働時間の認定者が「選択欄★」に1を記入すると労働者側主張、2を記入すると使用者側主張が「認定」欄に記入されます。0を記入すると、認定欄は空欄となります。
認定欄に記入された労働時間は、そのままでは計算に反映されません。記入済みの本ソフト(エクセルファイル)を別の名前を付けて保存し、新たに作成された別の名前のファイルの「時間・賃金計算書」対応欄にコピーアンドペースト(「値の貼り付け」を選択して下さい)して、最終的な計算結果を得ることになります。元のファイルの複製を作らずに、元のファイルの「時間・賃金計算書」にコピーアンドペーストをすると、「付・時間認定支援表」の労働者側主張欄に反映してしまいますので、ご注意下さい。